赤の証明。

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 ポロポロポロ。  中年男は怪我のせいで右手が脱臼で上手に使えず、しかも左手の手のひらも擦り傷で使いにくいため、時折ご飯やおかずを取りこぼす。両足は根元からギブスでガッチリ固められている。  中年男の世話を当面の仕事にした少女は、歳に似合わない甲斐甲斐しさで食べるのを手伝い、みじめそうな顔をした中年男はなんとか食事を終えることができた。 「…わるいね」 「バイトだから♪」  食器を片付けテーブルをフキンで拭く少女は、あっさりした様子で男に応えた。 「あの、悪いついでにお願いがあるんだが、、」 「ん?トイレ行く?」 「ああ」 「大?小?どっちかな?」 「しょ、小を少々…」 「ふふ、わかった♪」  ズリズリとまた腕を使い這いずり出した芋虫中年男を心配そうに立って眺めつつ、ひとあし先に玄関横のトイレに着いた少女は扉を開けて彼が辿り着くのを待った。 「済まない、たたせてくれないか?」 「ん、わかった♪」  彼女は中年男の左腕の脇に自分の右肩をいれ、男と協力しながら和式トイレに置いてある木製の踏み台に腰を据える手伝いをした。 「ああ、座れた。ありがとう、もういいよ」 「まだだよ♪」  そう云って少女は、中年男の縞柄パンツに指をかけた。
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