第二章 天才

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 場面は変わり、現実世界。事業への出資を求めてアレックス・ミテラと非現実の王国の窓口業務鈴木茜が面会。どちらも何か非常にイライラした様子。  アレックス・ミテラはアシュケナジ系のメガリア人だが兆国の国籍も持つミテラ財団の若い総帥。つまり地球で言うユダヤの大金持ちみたいな人物。政財界と繋がりは深く、実はナゴタの父親らと頻繁に連絡を取り合う関係。 「お嬢さんは?」  アレックスが話しかけた相手は三十代女性。児童心理学が専門の研究者。現状では巨大なゲームシステム『非現実の王国』のスポークスマンのような存在。だが本人は設計者である豊原遍に児童心理学についてちょっと相談を受けただけ、と考えている。 「鈴木茜と申します。非現実の王国の窓口業務をしております。また、私のことはお嬢さん、などとは呼ばないでいただきたい」 「失礼。わたくし、天才・豊原遍に会えると思って来たんですが」 「天才・豊原遍ですか。あいつは、何をもって天才などと呼ばれているんですかね」  ここでアレックス・ミテラがキレる。突然だ。 「はぁん?しらねぇよ!俺は大統領府官房職員レミライ・ドーレッドの紹介状があれば京国の銀行でお金を借り放題だと聞いた。だから、俺は紹介状を持って銀行に行った。そうしたら、融資は天才・豊原遍の事業に参加されることが条件ですとか抜かしやがる。だから、仕方なく来てやっただけだ。豊原ってやつがどうとかはしらねぇ!興味ねぇ。俺の興味は金だけだ」 「なるほど、ではこれをどうぞ」  鈴木茜はそう言って計画書を差し出す。いまどき、神の束だ。 「なんだこれは?」 「そういう事業の計画書らしいです」 「ふん、まぁ、いい」  そう言って計画書に眼を通すアレックス・ミテラ。その目の色が変わる。 「こ、これは!」  熱を帯びた目。素早く紙をめくっていくアレックス・ミテラ。
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