第二章 天才

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 場面は再び非現実の王国。天才児ウィルジーがまだ熱を込めて話している。 「豊原遍には他にも多くの噂がある。アンドロイドであるとか、暗殺された米田織咲(よねだおりさ)の息子であるとか、噂では京国の歴史の裏で暗躍したくノ一の子孫であるとか」 「なにそれ、すごい、かっこいい!」 「ナゴタ。忍者好きだよね」 「うん。パパ達の会社も京国の忍者部隊をモデルにしてるんだよ~」 「ナゴタ。お父さんの会社の話はよそでしない方がいいよ」 「そうだった。ごめん」 「メガリアにはオクラネバ事件以来、黄昏の平和主義が蔓延している。だから軍事産業に憎しみを抱いている者も多い。キャロラインのうちとかも」  そこにハツカネズミ姿のイディオが現れる。 「やぁ、また会ったね。わかるかい。おいらはイディオさ」 「イディオ!」 「このねずみが、イディオ!」  ウィルジーがネズミに合わせた低空飛行になる。 「イディオ、今日は友達を連れてきたんだ。彼はウィルジー。どうしてもイディオに聞きたいことがあるんだって」 「よろしく、ウィルジー。おいらに聞きたい事って?」 「はじめまして。ナゴタに聞きました。あなたは特異点の卵であると、そしてボクは特異点が人類の一兆倍のそのまた一兆倍という途轍もない知能を持つと知っています」 「おいらはまだそこまでじゃないけどね」 「ボクはIQ213です。メガリアの10歳の中で一番賢いと自負しています。しかし、イディオさん、あなたのような存在の前にたかだか213のIQがなんの役に立つというのでしょう」 「ふむ。天才らしい悩みだね」 そこに天空から矢が降ってくる。更に矢が刺さったキャロラインも落ちてくる。 「どうしたの、キャロライン」  キャロラインは消える。驚くナゴタにも矢が刺さる。ウィルジーは慌てて空から地面に、そこではオランウータンの姿になりナゴタを抱き抱えるが、ナゴタも光の粒になって消えてしまう。 「おい、ナゴタ!ナゴタ!」  見えない場所から更に矢が何本も飛んでくる。 「まずいな。避難しよう」  そう言って、ウィルジーとイディオはウサギ穴へと駆け込んだ。
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