第二章 天才

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 VRマシンルームの一角にある二次元のモニター。そこでThe UnRealms《非現実の王国》の広報担当者が出資者向けの解説をしている。この物語ではよく各章冒頭で学術的な解説をしている事が多い彼女。この広報はイディオとはまた別な人工人格。彼女は老婆の姿と少女の姿の二形態で老婆は魔女の箒を少女は絵筆を持つ。  UnRealmsは12歳以下の子どもしか遊べない。その間、親御さん達は近くで待っていることが多い。そうした人に暇つぶし的なコンテンツやらスポンサーからのCM、運営からの案内などを提供するのが主な役割。 その内容を少しだけ見てみよう……  ……知力も財力もなまじっか人並み以上に持つと欲が出て更にもっと欲しくなるものでしょう。 知力と財力。 普段からそれと縁の薄い人が「あんなものはくだらねぇよ」と嘯くのはよくある事ですが、まったくそれ無しではとても生きていかれない。  なので、他人に「あなたは頭が良い人ですか?」と聞くのは「あなたはお金持ちですか?」と聞くのと同じくらい無意味です。この質問に正直に答える人はほとんど居ない。多くの人が「いえ、それほどでもないですよ」と遠慮がちになるか「いいえ、頭は良くないです」と言うでしょう。  だからといって、誰にとっても「自分は馬鹿である」と認めるは「自分は貧乏である」と認めると同じくらいに恥ずかしい。大抵は少しでも良い方に思われたいものです。  知力と財力。 時代が特異点を超えて人工知能がそれらをナンセンスなものにしてしまっても、人間は本能のようにお金と知性とに憧れ、追い求め、少しでも多くを得たいと思うのではないでしょうか。 ……
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