第一章 競争

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 ここは《非現実の王国》の中。野原を飛び回るウサギになっている少年がいる。彼はナゴタ。この時、11歳(小4)。  楽しそうに駆け回るナゴタに陸亀の姿をした存在が話しかける。 「やぁ、楽しそうだね。ナゴタ」 「君は、誰だい? どうして僕の名前を?」 「おいらはこの非現実の王国の妖精さ。だからこの王国のことは何だってわかる」  陸亀の彼はゲーム内の妖精であると名乗る。  ナゴタは更に訊く。 「名前はなんていうの?」 「それは内緒さ」  そう、本当はイディオって名前がある。でもまだ教えられない。 「変なの」 「それより、君は駆けっこが得意なんだね。おいらと競争しないか。向こうのお山の麓まで!」  ナゴタは笑って答える。 「いいよ。でも、ぼくは途中で寝たりしないよ。亀の君が勝てるわけないじゃないか」  ところが実際に競争してみると、いつの間にか空間が歪んだように変化して亀は先に山の麓にゴールしている。  何度か、それが繰り返され、ナゴタは言う。 「ずるいや」 「おいらは、『ゴールよ、こっちに来い』って念じただけさ。君にも出来るよ」  ナゴタがやってみると実際、ゴールの方が動く。ナゴタは言う。 「でも、ぼくは自分の脚で走り回りたいんだ」 「知ってたよ。君には、みんながみんな、フェアにやってくれるわけじゃないってことを教えたかったんだ」 「だけど競争はフェアじゃなきゃだめだ」 「フェアじゃない競争は?」 「それは戦争だ」 「戦争はしたくない。じゃあ、ちゃんとした競争をしよう。フェアにやる。どうゆうルールがいいかな?」 「まず、ゴールを決める。ゴールは動かしちゃ駄目だ。それから時空を曲げたり、空を飛んだりも禁止。必ず、四つの脚で走る」 「いいよ」 「そして勝った方は負けたことの言うことをなんでもきく!」 「何でもは無理だよ。出来ることだけ」 「じゃあ、出来ることだけ、何でも」 「いいよ。出来ることならね」 「じゃあ、始めよっか」
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