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ここは《非現実の王国》の中。野原を飛び回るウサギになっている少年がいる。彼はナゴタ。この時、11歳(小4)。
楽しそうに駆け回るナゴタに陸亀の姿をした存在が話しかける。
「やぁ、楽しそうだね。ナゴタ」
「君は、誰だい? どうして僕の名前を?」
「おいらはこの非現実の王国の妖精さ。だからこの王国のことは何だってわかる」
陸亀の彼はゲーム内の妖精であると名乗る。
ナゴタは更に訊く。
「名前はなんていうの?」
「それは内緒さ」
そう、本当はイディオって名前がある。でもまだ教えられない。
「変なの」
「それより、君は駆けっこが得意なんだね。おいらと競争しないか。向こうのお山の麓まで!」
ナゴタは笑って答える。
「いいよ。でも、ぼくは途中で寝たりしないよ。亀の君が勝てるわけないじゃないか」
ところが実際に競争してみると、いつの間にか空間が歪んだように変化して亀は先に山の麓にゴールしている。
何度か、それが繰り返され、ナゴタは言う。
「ずるいや」
「おいらは、『ゴールよ、こっちに来い』って念じただけさ。君にも出来るよ」
ナゴタがやってみると実際、ゴールの方が動く。ナゴタは言う。
「でも、ぼくは自分の脚で走り回りたいんだ」
「知ってたよ。君には、みんながみんな、フェアにやってくれるわけじゃないってことを教えたかったんだ」
「だけど競争はフェアじゃなきゃだめだ」
「フェアじゃない競争は?」
「それは戦争だ」
「戦争はしたくない。じゃあ、ちゃんとした競争をしよう。フェアにやる。どうゆうルールがいいかな?」
「まず、ゴールを決める。ゴールは動かしちゃ駄目だ。それから時空を曲げたり、空を飛んだりも禁止。必ず、四つの脚で走る」
「いいよ」
「そして勝った方は負けたことの言うことをなんでもきく!」
「何でもは無理だよ。出来ることだけ」
「じゃあ、出来ることだけ、何でも」
「いいよ。出来ることならね」
「じゃあ、始めよっか」
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