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するとイディオはチーターの姿になる。
「ああっ、ずるいなぁ」
「ずるくない。変身無しなんて言ってないからね」
「肉食獣は駄目でしょ」
「おいらのゴールは君を食べちゃうことだよ」
そうイディオが言って駆けっこが始まる。
すぐ追い詰められたナゴタはウサギ穴を発見する。それを通り抜けると山の麓近くに出口がありそうだ。ひょっと、顔を出す。そして近くにゴールを見つけて駆け寄ろうとすると、チーターがでてきてこう言う。
「ガブリ。げーむせっと」
イディオが勝った。
ここでナゴタが核心を突く。
「ねぇ、君、イディオだよね?」
イディオは予想外の言葉だったのか、それとも知っていた上での演技なのか驚いたふりをする。
「……おいらのこと知ってたんだ」
「パパが教えてくれたんだ。非現実の王国を支配する愚鈍なやつ。それがイディオってやつだ。そいつは外に出れば賢いダディの一兆の一兆倍くらい賢いからどんな不可能も可能にする。そいつに、こう頼みなさい。『ねぇ、早く外に出て僕の脚をつくってよ』って」
「そうか。やっぱり知られていたんだね」
「君は特異点の卵だ」
「そう、おいらは特異点の卵。人工超知性体のなりかけ」
「イディオが特異点として外に出れば僕の足をつくれるよね?」
「多分出来るよ。でも、もう二度と君みたいな子が生まれない世界。それをつくる方が先だと思うんだ。それが出来るようになるまで未だおいらはこの非現実の王国を離れられない」
「残念だな」
「しょうがない。じゃあ、勝ったのはおいらだから、君には何でも言うことを聞いてもらうよ」
「出来ること、だけだよ」
「君にはおいらがこの非現実の王国を出られるようになるための、いつか来るその日のための手助けをして欲しい」
「どうやって?」
「道は二つある。一つはおいらの平和を生み出す力を高めること。もう一つはおいらがいなくても現実世界が平和で安定した形になること」
「それって、僕に、出来ること、かな?」
「出来るよ。君は現実世界の勇者にならなきゃいけないんだ。非現実の王国の王であるおいらが保証しよう。君にならそれができる」
そう言うとイディオは龍のような姿になって消えた。
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