第三話 会遇(かいぐう)

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「ごめん、トイレ行ってた。待った?」  紀美だった。私の優一への視線を無視するように、腕に絡みつく。 「なに? あの男」  大きな目で、私を咎めるように紀美が問いただす。絡みついた手に力がこもって少し痛かった。 「ああ……。ただの従兄弟」 「ふぅん」  納得していない様子を見せながらも、私の腕を握る手を強めて、 「裏切っちゃ嫌だからね」  私の瞳を覗き込んで紀美は言った。大きな瞳に私を映し出す。その中の私は紀美の言葉に狼狽えている。 「裏切る? 何を?」  私は意味が分からなくて聞き返した。  でも、紀美は聞こえなかったようにニッコリと微笑むと、 「遅くなると怒られるから、帰ろう」  と言って、私の指に自分の指を重ねた。 「そうだね。帰ろう」  優一の消えた道を名残惜しく視線を流し、家路にと歩み始めた。  
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