第二話 鶏晨(けいしん)

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「うちのお父さんがね、美由紀ちゃんが夏休み暇そうだったら、いつでも遊びにおいでって言っとけって。美由紀が成績いいから勉強教えてもらいなさいって言うんだよ」 「紀美は教えても右から左に抜けて行くじゃない。塾とかでちゃんと教えてもらった方が効率いいんじゃない? ほら、専門の先生だから教え方も上手いだろうし」 「分かってないなぁ、美由紀がいいの!」  眉を歪ませて紀美の我が儘が始まった。こういう我が儘なところも、男子生徒に人気のあるところなのかなと思う。 「そんなこと言って、本当は宿題写させてもらおうと思ってるでしょ? 私、中等部の卒業式の時に先生に言われたんだからね『高等部の先生にも言ってあるから宿題を見せないように』って」 「えええ~っ!」  泣きそうな顔になって美由紀を見上げるその表情は、どこか小動物を思わせる。クリクリとよく動くその瞳は魅惑的だ。  はぁ、と溜息を吐きながら紀美に言い聞かせるように話しだす。
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