第二話 鶏晨(けいしん)

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 一冊づつ手に取っていると、おかしなことに気がつく。よく見ると、六巻だけが貸し出し中なのか本棚になかった。 「仕方が無いか」  諦めて五巻までを手に取ると、本を落とさないように貸し出し口に向かう。  今日は並んでいる人も居なかったので、そのまま係の人が「どうぞ」と声をかけてくれた。 「五冊ですね、貸し出しカードをお願いします」 「はい」  学生鞄の中から図書館のカードを出すと係の人に手渡す。  係の人は流れるような手さばきでバーコードリーダーで読み取ると、次々と本に貼られているバーコードをスキャンしていく。あっという間に貸し出しの手続きが終り。五巻にレシートを挟んで貰うと、学生鞄に忍ばせていた花柄のエコバックに入れた。  自動ドアからフロアに出ると、ほんの少し気温が上がった。  フロアのベンチに向かうと紀美の姿がない。  トイレにでも行っているのかと思い、私はその場で待つことにした。  その間、借りてきた本を取り出し、序盤の方を読み始めようとした時だった。 「美由紀?」  不意に若い男性から声をかけられて顔を上げると、 「……優ちゃん」  そこに居たのは従兄弟の優一だった。
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