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一冊づつ手に取っていると、おかしなことに気がつく。よく見ると、六巻だけが貸し出し中なのか本棚になかった。
「仕方が無いか」
諦めて五巻までを手に取ると、本を落とさないように貸し出し口に向かう。
今日は並んでいる人も居なかったので、そのまま係の人が「どうぞ」と声をかけてくれた。
「五冊ですね、貸し出しカードをお願いします」
「はい」
学生鞄の中から図書館のカードを出すと係の人に手渡す。
係の人は流れるような手さばきでバーコードリーダーで読み取ると、次々と本に貼られているバーコードをスキャンしていく。あっという間に貸し出しの手続きが終り。五巻にレシートを挟んで貰うと、学生鞄に忍ばせていた花柄のエコバックに入れた。
自動ドアからフロアに出ると、ほんの少し気温が上がった。
フロアのベンチに向かうと紀美の姿がない。
トイレにでも行っているのかと思い、私はその場で待つことにした。
その間、借りてきた本を取り出し、序盤の方を読み始めようとした時だった。
「美由紀?」
不意に若い男性から声をかけられて顔を上げると、
「……優ちゃん」
そこに居たのは従兄弟の優一だった。
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