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第三話 会遇(かいぐう)
「……久しぶりだね」
微かな微笑みを向ける優ちゃんは以前より大人っぽくなっていた。最後に会ったときのことを思い出し、私は俯いてしまった。
四年間の時間は優一の身長を伸ばし、私よりずっと上に顔がある。サラサラとした髪の毛に、恥ずかしそうに見え隠れする切れ長の少し垂れ目の瞳。整った鼻梁に慎ましやかに添えられた引き締まった口元。私と同じように制服を着ているところから、自分の高校から直接来たのが分かった。
私はあの一件以来、優ちゃんと会うことを父から禁じられていた。
それを無視して会ってしまったことがバレたらと思うと、気が気では無かった。
「……すっかり嫌われちゃったね」
「……」
私が何も返せずにいると、沈黙に耐えかねて優一の方が先に口を開いた。
本当はずっと会いたかった。でも、禁止されていた。我慢に我慢を重ねた今、私の心は決壊寸前のダムのようだった。
その綺麗にカットされた、サラサラとした髪に触れたくて、その瞳を覗き込みたくて、あの日触れた唇に触りたくて、その身に纏ったお日様の香りに包まれたくて……。
でも、私は動けなかった。
「でも、僕は悪いことしたとは思ってないんだ。あれは素直な気持ちの表れだった。君のお父さんには分かってもらえなかったけど……。ただ、君がどう思っていたのかそこはとても気になっていて……」
「私は――」
あの時の私はどういう気持ちだったのか――
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