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そこに現れたのは優一だった。
私は咄嗟にソファの影に隠れた。
優一は目当ての本を見つけ出すと、すぐに去って行った。だが、手に取った物は源氏物語では無いらしい。別の古典の本を取り受付カウンターに向かって歩いて行ったみたいだ。これで優一が自分と会う為に小細工をしたのではないか、という可能性はなくなった。
どこかで優一が仕掛けて、自分と会う切っ掛けにしてくれていることに期待している自分がいた。
でも現実は違う。そんなに都合良く動いたりしない。
ほっとして。なんだ人違いか、と立ち上がろうとした瞬間、
「あなた、源氏物語のメモを見たの?」
不意に後ろから肩を掴まれた。
その瞬間、私の本能は信じられないような体の使い方をした。
「きゃあああああ!」
と、大声で悲鳴を上げてしまった。
「あらあらあら、びっくりさせちゃったわね」
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