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「あ」
という声が届く前に綺麗な放物線を描ききった空き缶は吸い込まれるように男の頭頂部へと直撃した。
「ッいってえ!? 何で空き缶が――――つか、誰だコラァ!!」
怒りの形相で周囲を睨みつける不幸な男と、その様子を眺めていた氷柱の視線がそれはもうばっちりと交差してしまった。
「おい」
「やば」
くるりと踵を返した少女は流れるようなスムーズさでその場を去ろうとする。額に青筋を浮かべる男に背を向け、ギリギリ早歩きの範疇に収まる程度の速度で元来た道を引き返していく。
「――――待ちやがれこのガキ!!」
最早彼の中では見事なコントロールで空き缶を己に命中させた犯人は青白い髪を揺らす着物少女で確定しているようで。
「わざとじゃないんだからそんな目くじら立てることないでしょ! つーか着物に草履じゃ走りづらいわね!!」
ただでさえ動きづらい恰好に加え、少女と男の体格差もあり逃げる側と追う側の距離の差はみるみる内に縮まっていった。
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