『吸血秘書と探偵事務所』 昔話①雪女との出会い

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「ごちそうさま!」 カン、と割れるか割れないかギリギリの勢いで空の茶碗をテーブルの上に置いた青白着物少女は差し出された湯飲みを引っ掴むと一息で飲み干した。 「そこまで言い食べっぷりを見せられると作ったこちらも気持ちいいものがありますね」 空になった湯飲みに新しくお茶を注ぐのは、長い黒髪を後ろで結わえたクールな印象を持つエプロン姿の一人の女性。l 青白少女が再び湯飲みの中身を喉に流し込んでいる間に、役目を終えた食器達を手際よく集めていく。瞬く間にテーブルの上が整理され残っているのは人数分の湯飲みだけとなった。 「さてじゃあ腹も膨れた所で、そろそろ話を聞かせて貰おうか……っと、まずは自己紹介が先だな」 テーブルを挟んで青白着物少女の対面に座る男は一度、湯飲みを傾け喉を潤すと改めて名を名乗る。 「俺は天柳相一。ここ、天柳探偵事務所の所長だ。探偵事務所が何をする所かはさっき言ったよな? んでこっちの美人は兎楽璃亜、ウチの事務所の数少ない自慢の存在クール系美人秘書だ。大体何でもそつなくこなしてくれるけどたまーに俺に対して当たりがきつくなるのが玉にきずだな。ついでに言うと隠れ巨乳だ」 「所長? 紹介して頂くのは構いませんが、あまり余計な事は…………」 「へーい」 「私たちの事はこれくらいでいいでしょう。次はあなたの話を聞かせてもらいましょうか」 青白着物少女は品定めする様に二人の顔色を見比べる。きっちり二往復した後、少女の口から出た言葉。 「あんたらってなに、デキてんの?」 ブッ、と何かを吹き出すような音の出所に目を向ければ口元をハンカチで拭う黒髪ポニーテールの美女がいた。 「…………何を言っているのかわかりませんが。私と所長の関係はあなたが邪推している様な物では決してありませんので」 「あっそ。別にどっちでも良いんだけど…………候補は多いに越した事はないしね」 その言葉通り、心底興味の無さそうな表情で湯飲みに口をつける。そのまま残った中身を呑み切ると空の器を璃亜に差し出した。それを快く受け取ると追加のお茶を注ごうとする、そこで。 (湯飲みが冷たい――――――? お茶が冷めた、それにしては…………) 「どうかしたか、璃亜?」 「いえ、特に」 再び湯飲みを少女に返す。少女は受け取ったそれに小さく息を吹きかけた。
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