狼騎士と初恋王子

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「隙あり!!」  すっかり手に馴染んだ木を削って作った剣を振りかざしてクレエは井戸水で顔を洗っている相手に飛びかかった。  クレエの攻撃に相手は特に驚きもせずに寸でのところで横に避ける。  ズササっと着地したクレエは素早く立ち上がり、水で濡れて視界が定まっていない相手の胴を目掛けて斬りかかった。 「まだまだ甘い」  赤子をあやすかのように相手は木の剣を自らの腰に下げていた剣の角度を変えて柄の部分で受け止め、クレエの首根っこを掴んで持ち上げた。 「クソっ! 下ろせよ!」  じたばたと両手両足を動かして抵抗するクレエ。それを相手は面白そうに眺めてから、ゆっくりと下ろした。  体格差がありすぎるのはクレエが小さいからではない。どちらかと言えば身長は平均より少し高い方だ。ただ、相手がこの国きっての誇り高き騎士団の隊長であり、尚且つ、銀の毛並みの美しい狼の獣人だからだ。  獣人というだけで普通の人間より体格が大きく、筋肉のつき方も違う。まして、相手は国と王を護るために集められた騎士団の精鋭中の精鋭。この騎士に勝てる相手などどの国を探してもいないとまで言われている強靭さを持つ最強の騎士だ。 「クレエ、隙をつきたいのならもう少し気配を消して近付け。そんなに殺気だっていたら山の中でも簡単に見つかるぞ」  クレエの頭をポンポンと軽く叩くとクレエは苛立ってその手を払い除けた。 「絶対いつか参ったって言わせるからな!」 「この分だとまだまだ先だな」  フッと笑った騎士にクレエは顔を真っ赤にして頬を膨らませた。
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