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とある病院で
ここは不思議な不思議な病院。
「私はシンデレラの姉……。王子にフラれたやけ酒で体を壊して入院中」
「麻呂はとある貴族おじゃ。かぐや姫のために燕の子安貝をとろうとして、足を踏み外し~の~」
「俺はオオカミ。7匹の子ヤギ食べたつもりが、危うく溺死するところだったぜ」
『狼いるし―!』
「まぁ、そう気にするなよ」
ここは不思議な不思議な病院。物語のわき役や悪役たちが入院中のようです。
「しかし、おのれ……。子ヤギを一匹見逃したばかりに危うく死にかけたわい」
「くっ……姫―!かぐや姫―!なぜでおじゃる?麻呂ではだめか~の~」
「妹は王子に選ばれて、お城暮らし。今まで全部家事をやっていた妹がいなくなったせいで家の中ぐちゃぐちゃよ!」
『それはシンデレラは悪くないのでは?』
「うるさいわよ!男ども!」
大きな挫折を味わった上に、体を壊しているのです。皆何かとイライラしています。
主人公になれなかった者たちは、口々に不満を口にします。
「そもそも何よ!ガラスの靴?それで女を探すとかありえなくない?シンデレラが普通サイズだったらどうするのよ」
「かぐや姫は麻呂どころか、帝のお誘いも断ったと聞いたでおじゃ」
「あそこで昼寝なんてしていなければ……」
「ていうか?何?顔忘れたわけ?は?というか王子ありえなくない?そんな程度の恋かよ?」
「かぐや姫は月の者だったらしいの~」
「あのお袋にめちゃくちゃ雑に縫われた腹の傷痛い……」
おやおや?
「しかも、仕事ばかりで美容なんて満足にできなかった妹に負けたの?私?女子力低い?やばっ」
「やはり月の者は価値観が違のでおじゃ」
「家入るのに、すげぇ頑張ったのに…」
彼らは自分たちのことを見返しているようです。
だんだん話しているうちに、お互いが不憫だと思いはじめたようです。
「しんでれらの姉御殿の世界の女子(おなご)はみな家事をしなければならぬ世界と?なかなか大変でおじゃる。もう少しのんびり生きればよいのにの~」
「俺が言うのもなんだけど、貢いだだけ損しないか?……まぁ、あんたがそれで幸せならいいが。あんた、本当にそいつと結婚して幸せになれるのかい?」
「ていうか、狼すごくない?あなた、母親のふりをして子どもたち騙し切ったんでしょ?え?すごっ?ちょっとやってみてよ」
そうして、病室で脇役のまま退場した3人はお互いを励まし合いました。
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