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なるほど。
その言葉はすとんと僕の胸に落ちた。
幼かったとはいえ母の生き方を知っていたからだ。
出来るだけたくさんの男の関心を得て
その実、本物の愛というものは誰にも与えず
己の為だけに生きた母はたえず美しかった。
母にはこれっぽっちも悪意はなかった。
ただ強かで自分を疑わなかっただけだ。
だからある意味
母はとても幸せだったと言える。
「僕は彼のお母様を知らないけれど——」
九条さんは僕の頭の中を見透かして諭す様に言った。
「和樹は違う。和樹は違うと思うよ」
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