episode253 挑発

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僕はガウンをひっかけると 裸足のまま廊下に飛び出して一目散ある部屋の前へと向かう。 それからドアを思い切りノックした。 「何なの?一体何の騒ぎ?」 わざとらしく欠伸をして。 純白のネグリジェ姿で貴恵がドアから顔を出す。 「こっちの台詞です。あなたはホントに……何するんですか!」 僕を憎み何より僕の母を憎んでいた貴恵。 「私が何をしたっていうの?」 夕べの話をきっと盗み聞きしていたんだ。 「枕元のお守り、開けたのはお姉様でしょう?」 「何を証拠に?」 「爪を見せて」 「いやよ」 不毛なやり取り。 「ほら、それが証拠だよ!」 ドアを蹴飛ばしたくなるくらいイライラする。 そんな僕の顔を拝んでようやく 貴恵は悪巧みの口元に笑みを見せるんだ。 「だって――どうなるか知りたかったんだもの」
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