episode253 挑発

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「解き放ったと言ってもいい。その意味分かるか?」 力で捻じ伏せ乱暴に唇を奪ってやると さすがの女王様も呆然として——。 「キスなんて久しぶりなんじゃない?亭主は僕に夢中だからさ」 「ちょっと……!」 最高の嫌味でようやく正気に戻ったみたいだ。 「こんなことして許さないわよ!」 踵を返す僕の肩先を掴んだ。 だけど今の僕にはそんな脅し これっぽっちの効力も持たなかった。 「引っ込んでな、お姉様――」 「なっ……!」 動揺した女を部屋に押し込め そのままベッドに押し倒す事などなんてことない。 「知らないの?僕は女だっていけるんだぜ?」 ネグリジェが捲れ上がり白い太腿まで露わになると。 「やめて……!」 初めて貴恵が僕に屈服した声を上げた。 「これ以上屈辱を与えられるのが嫌なら口を噤んでるって約束しな」 「何……ですって……?」 「あんたは小刀にもお守りにも触れてない。いいか?母の除霊は済んだ。すべてはうまくいったんだ」 「……分かったわ」 貴恵が頷いた時には 胸がすくような爽快感があった。 そう。 僕は生まれ変わったんだ。 本性のまま迷いなく生きられるように――。 「さてと」 呆気にとられる姉上の部屋を辞して 僕が本性の赴くまま向かった先は——。
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