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シャワールームの扉が開く。
洗面所に充満した湯気がすぐに鏡を曇らせた。
「悪霊払いは失敗だったみたいだな」
裸の僕を一瞥するや
髪から雫を滴らせたまま落ち着き払った声で征司が言った。
「ま、はなから期待はしてなかったが——」
こちらに近づいてくる。
熱い胸板は僕の鼻先すれすれ
バスタオルの棚に腕を伸ばした。
「もうシャワーから出るの?」
「出るよ。ダメか?」
わざと僕を無視して
バスタオルで髪を拭きながら征司は鏡の前に立った。
「ダメじゃないよ。でもね、征司――」
目覚めた本能が真っ先に向かった先が
この人のところだったことに僕は自分でも少なからず驚いていた。
「征司?」
「気になる?」
「いや」
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