episode253 挑発

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サロメを見るヘロデ王のように 征司の瞳には淫靡なものへの憧れと畏怖が同時に浮かぶ。 そのもっと奥を見つめて 僕はバスルームの床に膝をついた。 「正直に言うよ。僕が迷わないくらい愛してよ」 ドクン。 心臓が激しく脈打つ。 「たとえ僕が他の人を愛していてもさ――征司、あなたは僕をもっと夢中で愛してくれなくちゃイヤ」 跪きながらもなぜか 言いようのない優越感が爪先から脳天まで駆け抜けた。 「和樹……おまえっ……」 もちろん王様にも言い分はあっただろう。 だけど僕は文字通り有無を言わせなかった。 つまり——誘惑の手を緩めなかったんだ。 「アッ……!」 唐突に征司の中心を捉えると 先刻人差し指にしたのと同じことをしてやる。 もっとも——もっと激しくだ。 肩からバスタオルが滑り落ちる。 征司はかろうじて洗面台に手をついて己の身体を支えた。
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