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「ここじゃなんだね」
周りを見回し言う彼に
「いや、ここで構わないよ」
僕は答えて肩をすくめる。
綺麗な顔に不意に不安の色が浮かんだ。
彼は勘がいいから——。
「はっきり言うと僕がね――」
僕は硬直した九条さんの耳に唇を寄せて囁いた。
「僕が愛しているのはあなたなの」
「ああ……」
一瞬のうちに緊張が解けた肩に手をかけて僕は続けた。
「でもね九条さん、僕があなた以外を求めるのはあなたの所為だよ」
「どうして……」
「あなたの愛が足りないからだ」
再び硬直した彼の身体がすこぶる愛おしい。
だけど僕は——。
「どうすればいいか考えて。もっと僕を満足させてよ。それだけ」
わざと突き放してその場を離れた。
こうして本能のまま両者を挑発した。
何が起こるかって?
それはこの後のお楽しみさ——。
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