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キマイラの目の動きは妙だった。
伏せの姿勢で視線だけ上げて――部屋の二ヵ所。
そこに何者かいるように交互に眺めている。
「分かりますか。あちらの壁際の椅子と――」
そこでさすがのキラも言い淀んだ。
キマイラの視線は僕を通り越し
間違いなく僕の背後に注がれていたからだ。
「あ……」
それで僕はピンときた。
同時に夕べの薫の言葉の謎が解けた。
「……母ですか?」
かのこ——薫は夕べ僕の母の名前を呼んだ。
キラは部屋の片隅と僕の背後を眺め頷く。
「ええ、そう。あなたには美しいお母様の霊が憑いている――前当主様はそれで、あなたを家から出したがらないのです」
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