episode253 挑発

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「けれどそれは邪念ではないよね?」 静かに口を開いたのは九条さんだった。 「和樹にこの家にいて欲しいという想いは邪念ではないはずだ」 僕は思わず征司を見やる。 もちろん征司は他人事のように聞いているだけで 気の利いたことなど何も言わない。 「それでもとにかく、家で今起こっている怪現象はその子が原因なのよね?」 美しい夫に真っ向から反対するように 冷たく吐き捨てたのは貴恵だ。 「ついでに言うとそこの巻き毛の弟が狂ってしまったのも、やっぱりその子の所為だわ」 「俺は狂っちゃいない!」 すかさず薫は反論した。 顔色は悪いけれど有能な霊能者がここにいるからか——、 夕べよりずっと調子は良さそうだ。
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