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episode253 挑発
僕を丸裸にする——。
その言葉はおのずと兄弟の笑いを誘った。
「その子なら放っておいても勝手に脱ぐわよ」
傲慢に顎を上げ
蔑みのこもった瞳で貴恵は僕をねめつける。
「……夕べもなんでか裸だった」
そんなことだけは覚えているのか。
昨日の夜の事。
前後の記憶はすっかり抜け落ちていると言う薫が
今はごく自然な――つまりはいつもどおり陰気な口調で言った。
「すまないな、弟は思った以上にとち狂ってるみたいだ
征司はキラに椅子をすすめ
自分は少し離れた一人掛けのソファーに腰を下ろす。
「ちょっと……人を露出狂みたいに言わないで下さい」
心外だと怒鳴る代わりに
僕は着ているシャツの前をかき合わせた。
「そうだよ。それにその子がこの家の悪の根源だなんて――僕は甚だ疑問だ」
キマイラと庭から戻った九条さんだけが
もっともらしく僕を庇うけど――。
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