2人が本棚に入れています
本棚に追加
傘を風に持っていかれないようにしっかり握って歩く。
けれどほとんど雨は防げず、頭以外はどんどん濡れてゆく。
これじゃ、傘あんまり意味ないなぁ。
と思いながらも、ないよりはいくらかましだろうと思い直す。
建物のせいか、風向きがときどき変化する。
その度に、傘の向きを変えながら慎重に歩いていた--のに。
「あっ……」
不意をついた強い風に襲われる。
「やっ、ちょっ……」
一瞬で、傘がひっくり返った。
しまった、と思ったのも束の間。
嫌な音がして、傘の骨が折れた。
雨が顔を濡らす。
風が骨の折れた傘を嬲るように吹いている。
無残な姿になった傘の柄を握ったまま、わたしは立ち尽くしていた。
最初のコメントを投稿しよう!