闘いにやぶれるモノ

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傘を風に持っていかれないようにしっかり握って歩く。 けれどほとんど雨は防げず、頭以外はどんどん濡れてゆく。 これじゃ、傘あんまり意味ないなぁ。 と思いながらも、ないよりはいくらかましだろうと思い直す。 建物のせいか、風向きがときどき変化する。 その度に、傘の向きを変えながら慎重に歩いていた--のに。 「あっ……」 不意をついた強い風に襲われる。 「やっ、ちょっ……」 一瞬で、傘がひっくり返った。 しまった、と思ったのも束の間。 嫌な音がして、傘の骨が折れた。 雨が顔を濡らす。 風が骨の折れた傘を嬲るように吹いている。 無残な姿になった傘の柄を握ったまま、わたしは立ち尽くしていた。
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