闘いにやぶれるモノ

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ああ……。 風雨に負けた、ぼろぼろでもう使い物にならない傘。 それを見て、自分の中で、何かがぷつりと切れたような気がした。 がんばって、ここまできたけど、あっけなくボロボロになってしまった傘。 がんばって、がんばって、ここまできたけど、疲れ果ててボロボロな自分。 一瞬の風にあっけなく折れてしまった傘の骨。 傘の骨が折れてしまって、立ち尽くしいる わたし。 庶務に配属されていたけれど、営業がどんどん辞めてしまって営業が足りないからと営業部に転属になった。 慣れないながらも、がんばってきたつもりだ。 朝一のミーティングで怒鳴られ、帰社すれば部長から予算が達成できていないと糾弾される。 電子機器を扱う小さな会社で、営業は既存客をまわりつつ、新規客も開拓しなければならない。 飛び込みももちろんある。 むしろ従来の顧客の売上は著しい下降傾向にあって、新規開拓しなければどうにもならない状態にあるのは、わたしも理解している。 だからこそ、がんばっている。 でも、従来のお客様はうちよりも価格の安い他社へ流れ、飛び込んだ先でも、芳しい返答はなかなか得られない。 既存のお客様へ新商品の売り込みに行ったつもりが、不良品に対するクレームの対応に追われるなんてことも日常茶飯事だ。 予算の設定は明らかに達成不可能と思われる数字で、先が見えない。 先が見えない。 これ以上どうすればいいのか。 どこへ向かえばいいのか。 どうすれば。 どうすれば……。 傘は壊れた。 わたしは、どうすれば……。
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