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自分でも子供じみていると情けなくなる。
そんな話を打ち明けた妻は、反対することなく応援をしてくれた。
「ちゃんと夢に追い付いたら、また家族になりましょう」と。
それを聞いて泣いたのは私だった。
「呆れないのか?」
「呆れてるに決まってるでしょ。でもね、やりたいことを我慢してまで夫や父親であなたはいられるの?そんなに器用な人だった?」
皮肉も入っているのだろうが、私は首を横に振る。
「……すまない」
「そんな簡単に謝るようでやっていけるの?」
強い人だ。私よりずっと。
妻に私の通帳を預けて、私は本当にゼロからのスタートだった。
私の生活費より家族の生活の方が大切だ。一人で暮らす分を稼げば問題ないのだから。
いつか呆れ果てて、妻も娘も私を忘れていくのだろうなと予感はしていた。
だが、一月もしないうちに妻から電話があった。
何かあったのかと電話に出ると聞こえてくるのは娘の声。
「お父さん、デートしよう!」
つい、口ごもってしまうと娘が叩きつけるように叫んだ。
「デートしてくれなきゃ大嫌いだからね!」
「分かった」
自分にも娘にも甘いと思うが、会えることが嬉しいのに変わりはないのだ。
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