10人が本棚に入れています
本棚に追加
再び一月後、先月と同じファミレスで娘と会う。
やはり娘はこの一月の自分の話ばかり。
私は笑いながら聞いていたが、娘は思い出したように唐突にこう言った。
「お父さんの家に行こう!」
私の返事を待たずに娘は椅子から立ち上がる。
「お父さん、早くね!」
どうやら拒否権はないようだ。
何にもないよと言っても娘はお構い無しだ。
そのまま、アパートまで歩いたが、ふと思ってしまう。
離婚する意味はあったのだろうか?
娘と離れて正解だったのだろうか?
会社を辞めた理由は何だったのだろうか?
口にしてはいけないと思いつつも、ふと過るのだ。
アパートに着くなり、娘は部屋に駆けあがり、真っ先に私の描きかけの絵をまじまじと見る。
その絵は娘を描いたもの。
少し気恥ずかしいが嬉しくもある。
「これ、私?」
そうだよと答えると娘は頬を膨らました。
「私、こんな子供っぽくないもん!ちゃんと美人に描いて!じゃなきゃ大嫌いだから!」
つい分かったと口に出してしまったら、娘はにんまりと笑う。
「来月はちゃんとモデルやってあげるから、ちゃんと美人に描いてね」
簡単に約束を取り付けられてしまったが、やはり嫌ではないものだから、分かったと言ってしまう。
最初のコメントを投稿しよう!