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それから一月の間、私は絵を練習することもそうだが、絵画の技術を調べまくり、すぐに実践をした。
娘ほど恐ろしい先生はいない。娘に頭の上がらない父親は情けなくも思えるが、一番笑顔の見たい先生なのだ。
妻からも娘からもこれといった連絡は来ないが二人して、ほくそ笑んでいることだろう。どう足掻いても手の平の上にいるのだから。
秋も深まり、ファミレスのメニューにいかにも温かいものや秋の味覚が増えてきた。
もちろん目の前には娘。
これからモデルになる娘は、まず腹ごしらえをしているが、よそ行きの服を汚さないように上品に食器を扱っていた。
これから絵を描かなければならない私もスーツに身を包んでいるのだから人のことは言えない。
食後にコーヒーを飲む私を娘は頬杖をついて見守っている。
「ブラックコーヒーって美味しいの?」
「お父さんは好きだね。まぁ苦いけど」
「お父さんは激甘なのにね」
にんまりと笑う娘にやっぱりそう思われていたかと再確認する。
「甘いから苦味がちょうどいいんだよ」
出まかせとは、まさにこれだろう。
「私はいいと思うよ。せっかく独身なんだからカッコつけてもさ」
ついコーヒーを吹き出しそうになるが、そうだねと余裕じみた台詞を吐いてみる。
「さぁ、じゃあ、お父さんの部屋に行こうか?美人なモデルが協力してあげますよー」
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