悪魔の手記

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 自分は自分以外の人間を嫌いだと思った事がない。そもそも世の中に自分以上にひどい人間などいる訳がないと思うからだ。事実、自分以上に傲慢で計算高い人間に出会った事がない。自分以上に薄情で卑怯な人間に出会った記憶もない。言い変えれば、自分は誰よりも傲慢で計算高く薄情で卑怯な『(くそ)ったれ』であるという事だ。  そんな悪魔のような自分の魂の中に人間性の一欠片(ひとかけら)でも発見すべく、今まで関わった者の中から『こいつは嫌いだ。反吐が出るほど、心底嫌いだ』そう思えるような人間をあら得る難癖(なんくせ)をつけて()(つか)まえてみようと思う。  覚束(おぼつか)ない記憶のページを(めく)ってみる─…  ほほう……一人の男が浮上した。      
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