降りしきる雨に失くした傘を思う。

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 あの日からやたらと雨に見舞われる。  私は幾重にも重なる黒い雨雲の集合体を見上げ、ため息を落とした。  勤め先から駅へ向かうまではまだ降っていなかったのに。  駅の構内にあるコンビニの傘はすっかり売り切れてしまい、白いビニール傘を差して悠々と歩き出すサラリーマンやOL、学生さんの背を恨めしげに見つめた。  やはり濡れて帰るしか無さそうだ。  最寄り駅から家までの距離は歩いて十五分弱、走って十分ぐらい。  家では小学五年生の息子が一人、お腹を空かせて待っているだろう。
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