降りしきる雨に失くした傘を思う。

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「でも大丈夫よ? お母さんは丈夫だから風邪ひかないし。それに晴れ女だもん」  若い頃から口癖の如く、私は晴れ女だと自負している。  傘を持って出ると、決まって晴れるし、独身時代はあらゆるイベントを晴れで過ごしてきた。  晴れ女だと豪語すると、晴人は呆れて笑みを漏らす。  その表情から、今まで遭遇した通り雨を思い出しているのだと読み取れた。  晴人が小学二年生の夏だ。  その日の天気予報は午後から雨と報され、朝から不安定な空模様が広がっていた。  晴人の急な我儘で、切らしたアイスクリームを買いに自転車を出し、後ろの椅子に彼を座らせ、スーパーに向かった。  急いで買って帰れば、ギリギリ雨は免れるだろうと高を括り、自分の雨具は持たず、晴人のレインコートだけを積んで家を出た。  行動からして矛盾していると、今となっては気付く。  まだ雨は降らないと決め付けていたが、万が一降ってきたら子供は風邪をひいてしまう。  片親になって二年目のあの頃、この子は私が守らなければいけない、だから病気をさせる訳にはいかない、と肩に力が入っていた。
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