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「寝返るって、そもそも、なぜ彼女は委員会を辞めたんですか?」
「それは、君らがよく知ることで、私たちは知りえないことだよ」
頬杖をしながら、小首をかしげる仕草は可憐で思わず見惚れそうになった。
「ここに来たついでに、私からも君に質問が一つだけある」
「なんですか?」
「どこまで耐えれそうかい?」
何を耐えるのか、それはおそらくこれからも生徒会からの追撃があると、示唆している。
「わかりません、俺はそれほど強いわけでもないし、特別な能力があるわけでもない。 でも、あれですね。 向かってくるなら全力を尽くすだけです」
「わかった。 時間をとらせて申し訳ないね。 書類頼んだよ」
俺は生徒会長から書類を受け取ると、足早にこの部屋から出た。
扉を閉めて、数秒後に再度緊張が訪れ、重いため息を吐いてしまう。
「はぁ。 胃が痛くなってきた」
時計を確認すると、既にお昼休みが終わりに近づき、お弁当などを用意していなかったので、そのまま教室に帰ると、そこには入口付近で誰かを待っているナツメの姿があった。
「む、今来たか」
「ごめんね、急用が入って」
「ふん! まあ、あの女も命拾いした感じがするし、勝負は今度にお預けだな」
キリっとした目でこちらを見つめながら近寄ってくると、腕にもっていた箱を俺に差し出す。
「これは?」
「今日のお昼に食べる予定だった弁当だ、捨てるのも勿体ないから、食べてくれ。 まだ時間もあるし、その後で感想とか聞かせてくれると嬉しい……」
「うわ、ありがとう、正直食事は諦めていたけど、助かる」
「か、勘違いするなよ! 捨てるのがもったいないだけで、わざわざお前を待っていたわけじゃないんだからな!」
強引にお弁当が入った箱を手渡すと、彼女は急いで自分の教室に戻っていく、俺もそれを見送ると自分の部屋にはいり、机に座ってお弁当箱を開いた。
珍しい光景に、友だちが何人か声をかけてくるが、言葉を濁して回避すると、改めてその中身を確認する。
「すげ!」
そこで待っていたのは、色とりどりの見ても美味しいサンドイッチが綺麗に並べられていた。
一番端にカツサンドが存在感を醸し出しており、次にハムとレタスにチーズが入ったサンドイッチ、まずはカツサンドを一口いただくと、なんとおそらくお手製のソースに漬けこまれた衣、しかしそれに負けないしっかりとした味わいのカツ、凄く美味しい。
ヒレなどが人気があるが、俺はどっちかというとロースのように食べ応えのあるほうが好みで、まさに的中している。
次に食べたのは、野菜とチーズが鮮やかに彩られている一品を口に入れると、先ほどまでの濃い味付けに負けないチーズの香りが、一旦カツサンドの存在をリセットしてくれると、その後にフレッシュな野菜が脂を流して口内をさっぱりとしてくれた。
更に隣にならんでいるタマゴサンドを頬張るが、これもフワフワの玉子に、ほどよい甘みが加わり、絶品である。
一通り食べ終えて、箱の隅に置かれているミニトマトとブロッコリーを食べるが、このブロッコリー茹で具合が完璧で、凄く美味しい。
トマトも酸味がきいており、トータル的にとても美味しく食べ応えのあるお弁当だった。
大満足になった俺は、お弁当箱を丁寧にまた包みなおし、今日洗ってから返すべきと思い、鞄の中にしまう。
午後の授業も午前同様に集中して取り組める。
憂いがなくなったもの大きな要因ではあるが、唯一気がかりなのは、妹の存在で、いつごろ帰ってくるのかすら、把握していないのに、どうやって対応したらよいのだろうか。
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