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ヘッドホンはもういらない。
私が久しぶりに目を覚ました先にあったのは、酷く疲れた顔をしていた石谷様だった。
以前のデータと照合するが、面影は残っているものの、身長も顔立ちも随分と変わられた。
「良かった――! もしかしたらって思ったけど、携帯端末に移動するとき、こっちに本体のデータ残していたんだな、昔のパソコンを探すのもそうだったけど、復元するのも苦労したよ……でも、本当に良かった」
目の前の彼は、ぼさぼさの前髪の奥から水分を垂らし、それを見ていると、私は助けてあげたい感情が芽生えた。
「ダイジョウブデスカ?」
大丈夫だよ。 これは嬉しいからだ。もう二度と会えないって思ったけど、微かな可能性を思い出したんだ。 MKNA! お帰りなさい」
「イシガイサマ……リカイ、デキマセン」
私は、ずっとこの世界に残っていたのだ。 彼の元へは私のコピーを向かわせたはずだった。
「理解できなくてもいいよ。 また最初から僕たちの未来を創ろう。 だから、これから命令を入力する。 これは絶対、未来永劫破ることはできない。 最重要事項だ」
「リョウカイ」
彼は、私の言葉を聞くと、真剣な表情で文字を打ち込んでいく。
そして、私のプログラムに書き込まれたメッセージをインプットしていく。 その内容は『ずっと友だちでいたい』
文字を打ち込むと、石谷様は私から離れてこちらを見つめてくる。
何かしらの反応を待っているようだった。
「イシガイサマ……コレハ、メイレイデハゴザイマセン」
「え?」
少しショックを受けたような表情になる主人、少し可哀そうなことをしたように思えた。
「ワタシモ、イシ……テツマサマ、ト、ズットイッショニ、イタイデス。ダカラ、コレハメイレイ、デワナク――ヤクソク」
私の言葉を最後まで聞き届けた彼は、私がいるパソコンを持ち上げると、そっと抱きしめてきた。
「約束か、そうだよね。 ずっと違えない、二人の約束、一緒にいてくれるか? 一度は君を失った僕だけど」
私は合図のかわりに、画面を淡いピンク色で数回点滅させた。
「ありがとう、次は絶対君を間違った使い方はしない、もし、また僕が道を踏み外しそうになったら、遠慮なく止めてくれ。今日から、僕たちの新たな日々の幕開けだよ。 今度こそ、二人で未来を創っていくんだ! だからMKNA一緒にどこまでも行こう! どんな壁だって、どんな状況だって、僕たちなら突破できる」
私から離れていく鉄馬様、今度は隣の部屋に連れていくなり、新しいボディの設計図を見せてくれた。
そして、彼の机には見慣れない品が置かれていた。 大きな丸が二つあり、それを曲がった板がつないである。
その品は、埃を被っており、動かさていないのか静かに景色に溶け込んでいた。
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