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「今日はありがとね」
「いえいえ! こちらの方こそです」
お互いの家の前で、今日の最後にまた一つ笑顔を零して、咲妃さんは風船犬の巻きついた手を小さく振る。
「次はちゃんとプラン用意するんだよ」
「次……はい!」
その言葉があまりにも嬉しくて、思わず僕は背筋をピンと伸ばした。
そっと閉じてゆく咲妃さんの家の扉から、僕はしばらく目が離せなかった。
「次の話……してくれた」
「おにーちゃーん!」
「うおっ」
感動と余韻に浸る僕の背中に飛び乗ってきたのは、言うまでもなくあの少女。
「どうだった? ねえ、どうだった?」
「お、おい! お前、ずっと待ってたのか?」
「え? 一回帰ったよ。でもちょっとだけ待った」
少女は僕の後ろ首にぶら下がったままケタケタと笑う。
「そーんーなーこーとーよーりー」
じゃれつく少女を引きずって、家に入る。
「どーだーったのー?」
「お前、軽いなあ」
「ごーまーかーすーなー」
「はいはい。話すから、一旦離れろ」
少女を軽く振りほどき、座らせて少し改まる。
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