灰かぶりの少女

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 半身翻して、声の方を見ると……。  そこには──。 「お、オバケ!?」 「えっ!? オバケ!? どこ? オバケどこ!」  僕がオバケだと思った“それ”は自分がそう言われたとも思わずに、辺りを見回している。  頭からつま先まで、真っ白になりながら──。 「オバケ(いや)! オバケ!」  半ばパニック状態になった“それ”は、思わず、といった感じで僕に向かって駆けだしてきた。 「え!? ええええ!?」  それに恐怖したのか、それともただ汚れる、と思ったのか──。  僕は、それを反射的にひょいっと避けてしまった。  僕の隣でそれはどしゃっと派手に転び、灰の粉をぶわっと巻き上げた。 「うぅ~」 「ご、ごめん……」  うつ伏せに寝転んだそれを助け起こそうと、僕は手を伸ばした。  それは、どこかで見たような制服に身を包んだ女の子だった。  掴んだ手はとても華奢で頼りなくて、引き上げたら反動で飛んでいってしまいそうで。 「君は──」 「嫌ぁ! オバケ嫌ぁ!」 「オバケなんていないから! それより君は──」 「え? オバケいないの?」 「いない……」 「──あーっ!」 「今度は何!?」 「私……真っ白……」 「あ、それは……」  僕の投げたゴミのせいだと、肩をギクリと震わす。 「どうしよ……ママに怒られちゃう」 「ママ……?」  言うなり少女は、暗がりでもわかるくらいはっきりと目に涙を溜めて、すぐに大泣きを始めた。
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