赤い皮

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 ──しばらくして、ザリガニが水槽にへばり付いて触覚を動かし始めた。 「あ、動いた」 「ホント。動いたわね」  ザリガニは円らな目を二人に向けて、餌をせがんでいるようだった。 「ほら、なんか……餌欲しがってるわよ」  お嬢が顎で指し示すと、リーダーも「そのようね」と頷いた。 「……………」 「……………」  しばらく、ザリガニの挙動に困っていた二人だが──。 「……しょ、しょうがないわね」 「あ、あげるしかなさそうね……」  やがて同時にため息をつき、どちらからともなく餌袋を開けた。  備え付けの匙で、その固形を水槽の中へ投入してみる。  するとザリガニは、ハサミを使って器用に餌を掴み、口へと運んだ。  その様子を見て、最初は仕方なくといった顔付きだった二人も、世話の焼ける子供をヤレヤレと可愛がるように若干ニヤニヤし始めた。  餌による濁りの水流が、ゆらりと揺れる。  ちゃぷんと小さな水音をたてる、水棲生物。 「……い……意外と可愛いかもしれないわね」  お嬢が言うと、 「そ……そうね。意外と可愛いわ」  リーダーも答えた。  そこはさながら、小さな水族館。  二人は目を輝かせ、頬をピンクに染めてうふふと笑う。  ──ねぇ、ザリガニって意外と綺麗ね、ゆらちゃん──  ──そうね、赤くて綺麗ね、りらちゃん──  そんな会話を、心の中で繰り広げている。  二人はきっとこの先も、ずっとそんな感じ。 【end】
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