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「これは、くらげへの愛情をどう表現するかの戦いだ」
加代子先生が言った。
「同じ物を見つめているのに揉め事が起こるのか、同じ物を見つめているからこそ揉め事が起こるのか。──肝に銘じろ。戦争なんてそんなもんなんだよ」
そんな話を聞いて──。
「……………」
「……………」
二人の目には、じわっと涙が浮かんだ。
何だか無性に泣きたくなって、その感情が目尻に滲んだのだ。
加代子先生はそんな二人の様子を見ては優しい笑みを浮かべ、こう言った。
「お前らホントに、似たもの同士なんだな」と。
「ぐすっ……」
お嬢が嗚咽を立てて泣き出したのをきっかけに、リーダーも泣き出した。
「ひぐっ……」
それはまるで、お互いに意地を張りすぎて堰止められていたものが溢れ出るかのようだった。
「うわーーーーーん、ごめんなさいぃ~~~」
「加代子先生、ごめんなさいぃ~~~」
二人は、泣いた。小学生のようにわんわん泣いた。
高飛車なお嬢。そしてクールビューティーなリーダー。普段の二人からは到底想像もできない姿だろう。
二人はただ同じことを思い、同じ感情を高ぶらせた。
それでも二人は決して目を合わせないし、言葉も交わさない。仲直りをしたわけでもない。
ただ、校庭でのドッジボールとはいえ決闘めいた行いをして不穏な空気を作ってしまったことを、加代子先生に謝った。
もう、こんなケンカはしないと約束して。
──こうして、“昼休みのドッチボール騒動”は幕を閉じたのである。
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