バレンタインSS

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バレンタインSS

「長谷川くーん!これ!」 朝から、教室には絶えず女の子がやってくる。 そう今日はバレンタインデーだからだ。 可愛くラッピングされた箱を渡された長谷川くんは、困った笑顔をしながらありがとうと言って受け取っていた。 .........正直、面白くない。 でも人気者の、長谷川くんだから仕方ないって気持ちと半々で複雑だ。 「よいしょ」 長谷川くんは、可愛いラッピングがされた箱がパンパンに入った紙袋を2つ持って僕の前に立つ。 「かえろ?」 わざとかと、思うくらい可愛く首を傾げる長谷川くん。 「……はい」 可愛げ無い返事をする僕。正反対だ。 「なんか機嫌悪い?」 少し前を歩く長谷川くんは困った顔をしながら僕をチラチラと心配そうに見てくる。 「悪くないよ、全然」 あまり顔を見られたくなくてマフラーに顔をうずめ、下を向く。嘘、本当は面白くない。長谷川くんはかっこいい。それは分かってる。だけど、好きだと思うのは僕だけでいいのに、と女々しいがそう思う。その気持ちを知られたくなくて、長谷川くんと目が合わせられない。 そのまま、長谷川くんのお家にお邪魔する。 「ねぇ、颯真。」 部屋に入った途端、ベットへ押し倒される。 「なっ!」 油断していた僕は、あっさり唇を奪われる。 少しでも抵抗しようと長谷川くんの胸を押す。だがビクともしない。 「可愛いなぁ。」 ようやく唇から離れた長谷川くんは、可愛げ無い僕に向かって甘い言葉をかける。 「そんなこと、ないよ」 「いや、ものすごく可愛い。俺がチョコ貰う度にどんどん不機嫌になっていくの分かってもう学校で押し倒すの我慢したんだからね?」 そう言ってまた、顔を近づけてくる長谷川くんをなんとか回避しようと言うはずがなかった言葉を叫んだ。 「チョコ!すき?長谷川くん!」 とてもわざとらしい言い方になってしまったが、長谷川くんは思いがけない言葉だったのか、質問の意図が読めないのか、ピタッと動きが止まった。 「うん?好きだけど」 あのね、とサッと長谷川くんから離れて自分のカバンを漁る。渡す予定はあまりなかったのだが、やはりなにかしたくて準備はしていた。 「え?うそ?」 「長谷川くんには、いつもお世話になってるし、渡したくて」 なんだか急に恥ずかしくなって、長谷川くんと目を合わせられなくなったが、ガバッと抱きしめられたのでなんだかホッとした。 「嬉しい!嬉しい!颯真、そういうのしないのかなって、何も言ってなかったから!」 長谷川くんは破顔した。 僕は、渡してよかった、と安心したのだった。 END
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