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息が切れて喋ることが出来ない僕と、無表情のまま黙った長谷川くん。
僕は手を離すことも、歩いている間に息切れが治まっても話し出すことも出来なかった。
ようやく、長谷川くんの足が止まった。
「ここ、家。話、したい。」
そこは普通の一軒家だった。
(長谷川くんの家……!)
なぜ長谷川くんがあそこに居たのか、どうしてこの状況になってるか知りたかったので長谷川くんに従った。
「あ、お邪魔します」
「2階のすぐ右が俺の部屋だから先に行ってて」
お家には誰もいない様子でシンとしていた。
「(ここが、長谷川くんの部屋……)」
こんな状況だが、初めて入る長谷川くんの部屋の中を観察してしまう。
黒い色が多めの整理整頓されたきれいな部屋だった。普段の長谷川くんの明るさとは変わって落ち着いた雰囲気で緊張する。
(そもそも緊張するんだけど……)
トントンっと階段を上がる音が聞こえる。
「飲み物、もってきたよ、うわっ」
あまりにも緊張しすぎてドアの前に突っ立ったままだった僕に驚いた勢いでトレーに乗ったグラス達が大きく動いた。
「あ、ごめん。ど、どこに座ればいいか悩んでて……」
「適当にその辺座って?」
(ほんとは、座るとか、忘れてたんだけど。ださくて言えない。)
長谷川くんは、小さなテーブルにトレーを置いて、ベットを背もたれにして座った。僕は、おずおずとドアの側に座る。
座った僕を見るなり長谷川くんは、話し始めた。
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