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あのまさかの席替えから三週間が経った。
けれど、未だに眩しい彼を直視することができず、たまにチラッと盗み見るだけ。
いつも長谷川くんの席には人がいて、僕なんかは話し相手にもならないことを知ってるし、いても邪魔だろうし気配を消している。
学食から戻ると長谷川くんの友達が僕の席を使ってるようで僕はチャイムが鳴るまで図書室にいようと教室を出た。
図書室につくと、日陰で涼しそうな所へ座り適当に選んだ本を読む。
適当に選んだ割には面白い本で夢中になっていたらしく、昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴る。
僕は慌てて、図書室を出た。
図書室から教室へはいつも人が多めなメインの階段を使う方が近いのだが、今日は人気のない階段を下っていた。
あともう少し、というところで人の声が聞こえた。僕は、音を立てない様に踵を返しメインの階段に行こうとした。
「ずっと長谷川くんのことが好きでした。付き合ってください」
と女の子の声が聞こえてしまったから、思わず足を止めてしまった。聞くつもりはなかったのに、止まった足は動いてくれなくて
「ごめん、好きな子いるから付き合えない」
という長谷川くんの声まで聞いてしまった。
___へぇ、好きな子いるんだ。
ちょっとだけ、ほんのちょっとだけ、チクっとした。その胸の痛みには気づかないフリをした。
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