9人が本棚に入れています
本棚に追加
いつの間にか階段で座ってしまっていた僕は立ち上がろうと前を向くと、何故か長谷川くんが立っていた。
「あ、ごめん、なさい」
ちょっと困ったような顔をしているような気がしたんだけど、それは僕の気のせいだったようですぐにいつもの笑顔になっていた。
「いや、びっくりした。ってかそんなとこで座ってたら汚くなるよ。」
「ああ。そうだよね、ごめん」
僕はそう言って、立ち上がった。そして、疑問に思ったことを聞いてみた。
「長谷川くんは、な、なんで僕がいるってわかったの?」
「あぁ。これ。」
と言って長谷川くんが指さしたのは、階段の踊り場にある窓だった。
あぁ、そうか。僕が見つかったというよりは人がいるのが分かったから、か。その窓には僕の靴しか見えていない。
ってなんで僕は少しがっかりしているんだ。
「聞くつもりなかったんだけど、ほんとごめんなさい。」
改めて、僕のしたことを謝る。
「ううん、いいんだ。それより颯真はどこ行ってたの?」
失礼なことをした相手に他愛のない普通の会話をしてくれるなんて、いい人だ。
「……図書室に、行ってたよ」
ふーんそうなんだ、って興味がないからだろうか、いつも囲まれて話をしている長谷川くんとは違って少しぶっきらぼうな感じがした。
……まあ、当たり前か。たまたま隣の席の地味な男子が告白現場に居合わせてやがるし、長谷川くんからしたら気分悪いよね。
心の中で、もう一度謝った。
最初のコメントを投稿しよう!