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(颯真とだからじゃん?)
この言葉が頭から離れない。
なんで、そんな特別、みたいな言い方するんだろう。無駄にドキドキしてしまってる。
すごく仲のいい友達ってわけでもないし、ましてや女の子に言えば惚れない女の子は居ないだろうセリフをなんでこの地味な僕に言うんだろう。それが気になって授業に集中できなかった。
そして、帰りのHRが終わり、みんなが帰り支度をする中、僕は日誌を書いていた。
少しずつ書き進めていたから、さほど時間はかからないだろうしサッと書いて帰ろう、そう思って書き出した時だった。
「あ、颯真!日誌、全部書いちゃった?」
上から声がしたので、見上げると目の前に長谷川くんがいた。
「(ち、近い!)あ…や、まだ、だよ」
「あ~良かった。颯真、てきぱき日直の仕事しちゃうんだもん。それまで終わっちゃったら、俺、何も仕事できないままなんだけど?」
そう言って、長谷川くんは僕の前の席へ座った。少し遠くなった距離に安心した。
「ご、ごめ、長谷川くんのお手を煩わせるのは……」
恥ずかしくて、言葉が続かない。
「…ぷっ」
なにそれ俺、上司みたいじゃんとツボに入ってしまったらしく、しばらく笑っていた。
そんな長谷川くんを横目に僕は長谷川くんを待たせる訳にはいかない早く書き終わらねば、と急いで日誌に集中した。
すると、笑い終えた長谷川くんが僕の机に頬杖をついているのが、視界の隅に入った。
「ねぇ、颯真は好きな子、いないの?」
長谷川くんは、首を傾げながら僕の返事を待つ。
そんな話が長谷川くんのなんの得になるのかさっぱり分からなかったが、僕は答える。
「いない、よ?」
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