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あのバーに行ったら、また出会ってしまうかもしれない。だからしばらく行くのは控えよう……。
そうすれば、もう二度と会うことは無いだろう。そう、もう二度と……。
ちょっと惜しい気もするけど、良いんだ、これで。それが俺の生き方。俺の人生……。
それより、今はヒートが来たことの方が衝撃だ。明日、病院に行ってみよう。何か変化があったのかもしれない。もしかして、できそこないじゃなくなったのかな? じゃあ、まともに恋愛出来るのかな、俺……。
「ふあ……」
難しいことを考えていると欠伸が零れた。ふふ、と笑い声。新堂さんだ。
「近いうちにまた会おうね」
「……そうだね」
「ふふ。その時はよろしくね」
「……うん、よろしく」
妙に自信あり気な言葉に疑問が湧いたが、気に留めるのは止めた。どうせ、またあのバーに行けば会えるって思っているんだろう。残念。もう行かないから。
いよいよ本格的に眠くなってきた俺は目を閉じた。新堂さんの体温があったかい。終わった後、こんなに近くで相手と寝るのって初めてだな……。
いつもは行為が終わったら背中向けて寝ちゃうし。
新堂さんはベッドの外でも中でも優しい人だった。こんな人と恋愛出来たら幸せなんだろうな……どうすれば良いのか分からないけど。だから俺は逃げるしかない。愛されたいと願う反面、愛し方が分からない。愛がこんなに欲しいのに、どうすれば良いのか分からない。駄目だな、俺って……。
自分がどうしようもなく惨めに思えて、俺は新堂さんに背中を向けた。すると、ぎゅっって抱きしめられた。そのぬくもりに泣きそうなる。
「……おやすみ」
「おやすみ。青葉君。次に会う時は……」
小声で囁かれた言葉は、意識を飛ばす寸前の俺には届かなかった。
もう会えないよ、新堂さん。
ばいばい。
お別れを心の中で言って、俺は眠りの世界へと旅立った。
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