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思いがけない再会
「……で、急にヒートが来たんです」
「うーん。どうしてでしょうね?」
「さあ……?」
「不思議ですねえ」
アパートから歩いて二十分のところにある「立花医院」に俺は来ていた。予約を取らなかったので一番最後に回されるかと思っていたが、先生が患者の間と間に挟んでくれたので早めに診てもらうことが出来た。
立花先生はまだ若いけど威張って無くて話を丁寧に聞いてくれる、信頼できる先生だ。この人のお父さんも医院長としてこの病院に勤務している。親子揃ってエリートだ。羨ましい。
「そのアルファの男性と波長が合ったのかもしれませんね」
「波長、ですか?」
「良い出会いだった、ということです」
良い出会いか……確かに新堂さんは良い人だった。
別れたのは今朝。目覚めたらすでにお風呂が沸かされていて、朝食はルームサービスを取ってくれて、見送りのキスをしてくれて……至れり尽くせりな朝だった。キスは余計だったけど。
「まあ、心配なのは私も同じですね。青葉さん、貴方はまたふらふらとして」
「だって先生、その……抱かれないとどうしようもなく不安になるんです。俺は本当にオメガなのかって。だから……」
「では、そろそろ本物の恋人を作ったらどうです? 今回の男性は貴方を欲しいと言ってくれたんでしょう? 試しにお付き合いしてみてはどうですか?」
「それは……恋愛の仕方なんてどうすれば良いのか……」
「初めは誰だって愛し方なんて分からないものですよ」
「……先生もそうだったんですか?」
「私の話はどうでも良いんです」
きらり、と先生の薬指には銀色の指輪。良いなあ、皆、まともで。できそこないの俺には遠い夢だよ……。
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