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ぱらぱらとメニューをめくる。新堂さんは出汁巻き卵を指差した。
「これ、食べよう」
「へえ……なんか意外です」
「青葉君、こういの好きそうだから。甘いの」
「っ……俺、卵はしょっぱいのが好きです!」
本当は砂糖がいっぱいのやつが好き。そのことは新堂さんにお見通しのようで、いかにも微笑ましいですみたいな顔で見つめられた。恥ずかしい。
女性がビールを持って来たので、出汁巻き卵の他にも枝豆やタラコスパゲッティ、唐揚げやトマトのピザを注文した。何でもありな店だな……と思う。メニューには統一性が無く、まるで客の要望に応えて増やしました、と言った感じがした。
「では、素敵な出会いに乾杯!」
「……乾杯」
カン、とガラスが重なって良い音が鳴った。俺はひとくちビールを飲む。苦い。けど、美味しい。ノンアルコールじゃないビールを飲むのは久しぶりだった。
新堂さんもごくりとビールを飲んだ。上下する喉仏に思わず目を奪われる。男らしいな……俺はらしくもなく、あの夜のことを思い出してしまっていた。気持ち良くて、甘い夜。ああ、頭がぼんやりする……。
すると、新堂さんが俺に声を掛けてきた。俺は慌てて頭を現実に戻す。
「……平気かい? 目が赤くなってるよ」
「え……」
「顔に出やすいね。お酒、弱いの?」
「……強くは無いです」
「そっか。無理はしないでね」
次々に料理が運ばれてくる。俺はスパゲッティを皿に取り分けて新堂さんと半分こした。フォークが無いので割り箸でそれを食べる。タラコのぷちぷちした食感が感じられてとても美味しかった。つるつると麺を啜っていると、それを新堂さんがそれをじっと眺めているのに気が付いた。
「……何ですか?」
「いや、美味しそうに食べるなあって思って」
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