一晩の愛

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 俺がそう言うと、その人は照れたように笑った。何歳くらいだろう……三十歳はいってるかな? もしかしたら四十代かも。それくらい落ち着いた雰囲気。ま、二十三歳の俺からしたら年上に違いない。  よし、この人にしよう。  俺は心に決めた。 「俺のこと、気になる?」 「……気になるから、声を掛けたんだけど」  そう言いながら男性はキツそうな酒に口を付けた。アルコールの匂いが漂う。酒に弱い俺はその香りだけで酔いそうになった。 「じゃあ、行く?」 「どこに?」 「ホテルに決まってるよ」 「……もっと言い方があるだろう?」  男性――お兄さんは苦笑した。その顔も格好良い。タイプ。この人になら、抱かれても良い。  俺は距離を詰めて、カウンターの上に置かれた手に触れた。 「最終的にはそれが目的のくせに」 「……参ったなあ」 「ね、出ようよ。早く、したい」  視線を合わせて上目使いに言う。すると、お兄さんは手を握り返してきた。大きな手だ。 「分かった。場所の希望はある?」 「建物の中ならどこでも」 「ふふ。じゃあ、僕が泊まっているホテルでも良い?」 「うん」  ふたり同時に立ち上がった。俺は財布を出そうとしたけど、止められた。奢ってくれるらしい。俺は黙ってお言葉に甘えた。 「泊まってるって、仕事か何か?」
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