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愛について
「へえー。ここが青葉君のおすすめのお店か」
「……すみません。おすすめと言ってもネットの口コミだけで選んだんです」
「良いよ。良い感じの雰囲気だし。嬉しいな」
そこはこぢんまりとした居酒屋? というか小料理屋? というか……とにかく落ち着いた雰囲気の店。ネットの口コミ数は少なかったが、どれも「美味しかった!」とか「個室になってて良かった!」とか高評価だらけだった。会社から歩いて十分の距離だったし丁度良いか……と思ってここにしたけど、大丈夫かな……。なんだか隠れ家カフェに来たみたいだ。緊張する。
「二名様ですか?」
「あ、はい」
着物姿の女性が現れて、俺たちを席に案内してくれた。店内は思った以上に広く、鰻の寝床って言うんだっけ? 奥へ奥へと部屋が続いていた。襖の空間が広がっていて、ああ、個室ってこういうことか、と納得した。
一番手前の部屋に通される。座敷になっていたので、部屋の入り口で靴を脱いで上がった。新堂さんを先に部屋に入れて、次に俺が、最後に着物の女性が入る。
「とりあえず、ビールで。青葉君は?」
「あ、じゃあ、俺も……」
いつもならノンアルコールだけど、今日は疲れたし酔いたい気分。
「かしこまりました。追加がございましたら、このボタンでお呼びください」
女性が指差したところには、ファミレスなんかで店員を呼び出すボタンがあった。なんだか部屋の雰囲気とミスマッチ。けど、これだけ広い店だとこういう装置が無いと不便だから仕方ないよな……。
女性はメモ帳のようなものにさらさらと何かを書いてから部屋を出て行った。取り残された俺たちの間に沈黙が走る。
「あ、えーっと……メニュー見ますか?」
「そうだね」
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