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翌日の朝、ミカは学校の昇降口で黒田に会った。
「おはよう」
ミカに気付いた黒田が声をかけた。ミカは少し照れながらも笑って、おはようと返した。
「一緒に教室行くか?」
「うん」
ミカと黒田は並んで教室を目指した。
「黒田くん。今日の放課後、一緒に勉強しない?」
「あぁ、分かった」
「場所は図書室で良い?」
黒田が、ん。と小さく答えた後、二人の間には沈黙が広がった。ぎこちない距離を取りながら教室に着いて、それぞれの席に座った。
教室は生徒がまだ少なく、先に教室に居たよし子が席に着いたミカに駆け寄り、前の席に座った。
「ちょっと、今のどういうこと?」
「今のって?」
「黒田と一緒に入って来たでしょ?」
「昇降口で会ったから」
「会ったからって一緒に来る? 黒田と何の話するってんの。あんな粗暴なやつ」
よし子の言葉にミカはたじろいだ。確かに黒田に良い印象を持っている人は少ない。だが、自分を助けてくれたことには変わらなくて、乱暴なことをされたことなどなかったし、見たこともなかった。
「よっちゃんの言う通り、黒田くんは悪い噂ばっかりだけど、本当はそんな人じゃないよ」
ミカの少し悲しそうな表情によし子は、まさかと息を飲んだ。
「ミカ。黒田のこと」
その時、ミカの隣の席に黒田がどかっと腰を下ろした。よし子はぽかんと口を開けて黒田を見た。
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