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森本ユキノ
「ヒナコ、だいぶまいってるわよ。」
腰をマッサージしてくれてるイオリにそう言うと、『へえ』って短い返事の後。
「新庄、時代錯誤な男だからなー。」
あまり気持ちの入ってないようなトーンで言った。
「イオリから見てもそうなの?」
「うーん。育った環境なんだろうけどさ。結構古臭い事言ってるよ。」
「そうなの?」
「今日のバーベキューだって、ヒナちゃんばっか動いてたから手伝おうって言ったんだけど、女がやる事だとか何とか言ってさ…」
「へーえ。」
ま、そういうあなたも、ミユキちゃんに鼻の下伸ばしてたけどね。
私、森本ユキノは28歳。
妊婦。
夫のイオリとは、社内恋愛。
結婚の話は…まだ出てなかったけど。
私の妊娠と共に、イオリがプロポーズして来た。
「俺にユキノの未来を預けてくれ!!」
預けてくれって(笑)
あんた、銀行かっつーの。
私は心の中で小さく笑いながらも、涙を浮かべてイオリの胸に飛び込んだ。
私は…昔から冷めた性格だ。
カッコ良く言えば『クール』だけど、正確には…無関心。
だから、人間関係とか恋人とか親友とか…結婚とか離婚とか、本当はどうでもいいのよね。
でも、ヒナコは入社式で隣にいて。
すごく可愛かったから。
好きになった♡
え?女だろって?
そこは別にどうでもいいのよ。
ヒナコを好きで好きでたまらないわけじゃないから。
でも順位で言うと、一位がヒナコ、二位がイオリ、三位…もう嫌いな人以外はみんな一緒だわね。
こんな感じ。
私の『好き』のレベルなんて、たかが知れてるわね。
だけど…
あの時ばかりは、驚いた。
入社以来、親友として隣にいたヒナコに…彼氏を紹介された時よ。
そこには、見覚えのある男がいた。
そう。
セフレの関係の後、少しだけ恋人関係になった新庄キヨシがそこにいたからよ。
大学時代、人数合わせで行った合コンで知り合ったキヨシ。
明るくて頭のいいキヨシは、人気者だった。
当時、私には彼がいたけど、そんな人気者から誘われたら…まあ、興味あったし。
二次会の後で、即ホテルへ。
そこでコトを終えた後に、お互い恋人がいる事が分かって…
セフレ契約を結んだ。
キヨシは後腐れのない、いいセフレだった。
身体の相性もまあまあ良かった。
キヨシが就職した途端、付き合おうって言って来た時は少し驚いたけど、別に損はないからいいかな。ってOKした。
だけど、会うたびにセックスしたがるキヨシ。
がっつくように始めて、自分がイッたらおしまい。
ちょっとちょっと…
セフレの時の方が、よっぽど良かったわよ…
そんなわけで、私のセフレ探しが始まった。
元々、男の子と一緒に居る事が多かった私は、歴代彼氏に『ユキノは信じられない』ってフラれる。
キヨシとも、そんな理由で別れた。
まあ、いつの時も、それが作戦と言えばそうなのかな。
自分がフッて後を引かれるより、私がフラれてサッパリ終わる方がいい。
なんたって、私はそこまで本気にならないから。
誰に対しても。
だからー…
ヒナコの事は好きだけど。
自分にとって面白い事があれば。
『親友』って関係も、薄っぺらくなっちゃうかもよね。
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